2018.01.13
- コラム
技術士第二次試験 Ⅲ選択科目 論文の書き方 「多様な視点」とは何か?
1.「Ⅲ選択科目」で確認される能力
「技術士第二次試験受験申込み案内」に課題解決能力の概念と内容について記載があります。
この中で「多様な視点」という言葉が出てきます。
概念:社会的なニーズや技術の進歩に伴い,最近注目されている変化や新たに直面する可能性のある課題に対する認識を持っており,多様な視点から検討を行い,論理的かつ合理的に解決策を策定できる能力
内容「選択科目」に係わる社会的な変化・技術に関係する最新の状況や「選択科目」に共通する普遍的な問題を対象とし,これに対する課題等の抽出を行わせ,多様な視点からの分析によって実現可能な解決策の提示が行えるか等を問う内容とする。
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2.「多様な視点」とは何か?
(1)「多様な視点」で考えるのは意外に難しい
以下に、具体的な例題を示しながら、「多様な視点」について説明していきたいと思います。
次の問題文の下線部の問いを考えます。
平成25年度技術士第二次試験問題(建設部門)
建設環境【選択科目Ⅲ】
(答案用紙3枚以内にまとめよ。)
Ⅲ-1 我が国における総CO2排出量においては、都市における社会経済活動に起因することが大きい家庭部門やオフィスや商業等の業務部門と自動車・鉄道等の運輸部門における排出量が全体の約5割を占めている。このような状況を踏まえ、建設環境の技術士として以下の問いに答えよ。
(1)低炭素都市づくりを実現するための方策を3つ具体的に示し、各々の方策が低炭素に寄与する仕組みを述べよ。
(2)その方策のうち、あなたが重要と考えるもの1つについて、その理由を説明するとともに、その方策の実施に当たっての技術的課題を述べよ。
(3)上記の課題を解決するための技術的提案及びその提案の留意点やリスクについて述べよ。
「低炭素都市づくりを実現するための方策を3つ具体的に示し」に対して、例えば、「公共交通機関の利用促進」「交通流対策の推進」「エコカーの推進」の方策をあげるとします(図 1参照)。
これらの方策は、全て低炭素都市づくりに寄与する方策です。それぞれの方策は低炭素に寄与する仕組みは違いますが、自動車は人一人あたりを輸送する際のCO2排出量が大きく、自動車のCO2排出量の総量を低減させる方策となっています。
しかし、これでは「多様な視点」があるとは評価されないと考えます。
図 1 低炭素都市づくりを実現するため3つの方策(例1)
問題文をよく読むと「家庭部門やオフィスや商業等の業務部門」と「自動車・鉄道等の運輸部門」の総CO2排出量の約5割もあるとあります。このため、「家庭部門やオフィスや商業等の業務部門の方策」と「自動車・鉄道等の運輸部門の方策」について触れる必要があると考えます。
図 1であげた方策を「家庭部門やオフィスや商業等の業務部門の方策」」と「自動車・鉄道等の運輸部門の方策」に区分すると、図 2のようになります。
実は、図 1であげた方策では、「自動車・鉄道等の運輸部門の方策」にのみ触れていて、「家庭部門やオフィスや商業等の業務部門の方策」には触れられていません。
これは解答として、間違ったことをいっていませんが、このようなことにならないように、私たちは多様な視点を持って、論文構成を考える必要があります。
図 2 低炭素都市づくりを実現するため3つの方策(例2)
(2)「多様な視点」を学ぶ
記述式は、唯一絶対の正解はありません。
そんな中で、技術士としてふさわしい解答をするためには、課題に対して「多様な視点」で検討する、分析する必要があります。
しかし、先程の例のように、思いついたものから書いてしまったり、問いを適切におさえられてなかったりすると、私たちも気づかないうちに狭い視点になってしまいます。こうならないようにするためには、多様な視点で考えるプロセスを学び、訓練し、自分が狭い視点で考えてないかを常に自分でチェックする必要があります。
2.「多様な視点」で考える
(1)「多様な視点」で考える?
筆記試験では、課題解決能力として、多様な視点からの分析を求められています。しかし、「多様な視点」で考えるとはどういうことでしょうか?
再び、先程の例題をもとに考えていきたいと思います。
多様な視点からということを考えると、記述する内容にモレがないようにする必要があると考えます。しかし、図 3のように網羅的に列挙して示すとどうなるでしょうか?
網羅的に示した場合、論理的、合理的な答案として採点委員に受け取ってもらえるでしょうか?
採点委員は、受験者が解決策の引き出しをたくさん持っていることは分かりますが、多様な視点で分析するということは、必ずしも網羅的に列挙すればいいわけではないと考えます。
また、先程の例題のように、問題文には解答する課題や解決策の数を限定される場合があります。解決策を網羅的に列挙するというのは、あまり現実的ではないと考えます。
図 3 低炭素都市づくりを実現するため方策(例3)
(2)重要な論点のセットを考える
多様な視点であることを解答に示すためには、問題文に対して「重要な論点のセット」をおさえることが重要と考えます。「重要な論点のセット」をおさえるとは、AとBとCという論点さえおさえていれば、納得感が得られる論点のセットのことです。重要な論点が一つでもモレてしまうと、それだけで評価が低くなってしまいます。
ここでは「重要な論点のセット」を考える上での思考プロセスについて説明します。
次に示すプロセスで考えることが重要と考えます。
<重要な論点のセットを考える上での思考プロセス>
ステップ1 論点を洗い出す
ステップ2 論点を絞り込む
まず、最初のステップとして論点と解決策を洗い出す必要があると考えます。
2決め打ちで思いついた方策をあげるのではなく、問題文に対して、「この問題について考える際に、そもそもどんな論点が考えられるか?」を一歩引いた大きな論点から洗い出すことが重要となります。ここで重要なのは、自分が「この論点を述べるべきだ」と思っているより広く関連する論点を洗い出すことだと考えます。大きな論点にモレがあると、後で取り返しがつかないことになってしまいます。
次に、思いついた全ての論点を列挙するわけにはいかないため、洗い出した論点を絞り込む必要があります。
「論点を洗い出す」→「論点を絞り込む」といったステップを踏むことで、重要な論点についてモレをなくしながら、言及することができると考えます。
一方、試験では制限時間あり、実際には数分で重要な論点をおさえる必要があります。
数分の間で、正攻法で問題文から「論点を洗い出す」→「論点を絞り込む」のステップを踏み、重要な論点を洗い出すことは至難の業と考えます。
このため次のことが重要になります。
○事前の勉強の段階で重要な論点のアテをつけること
○重要な論点のアテをつけるために、事前に「論点を洗い出す」→「論点を絞り込む」といった思考のプロセスをトレーニングすること
重要な論点のセットを考える上での思考プロセスを踏み、重要な論点をあげるプロセスについては別途具体的に説明します。
参考までに、図1よりも多様な視点で考えた場合の方策を図4に示します。
図 4 低炭素都市づくりを実現するため方策(例4)
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下所 諭 (げしょ さとし)
技術士(建設部門、総合技術監理部門)
大手建設コンサルタント会社で13年間勤務。広島大学 客員准教授。
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合格者インタビュー(建設部門)
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